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2019年1月 6日 (日)

柔道における正月・元旦式・鏡開き

柔道における正月の年中行事の「元旦式」「鏡開き式」についてまとめます。

鏡開きの歴史

歴史的に、現在の鏡開きの元になっている行事は、戦国時代や江戸時代に行われていた「具足祝い」「具足開き」の行事です。
武家で、正月11日(もと20日)に鎧・兜などの甲冑の前に供えた具足餅、または武家餅を下げ、刃物を使わず、槌で割って食べた行事のようです。

具足祝い・具足開きでは、具足餅(鏡餅)を割る際、刃物で餅を切ることは切腹を連想させることから縁起が悪いとされ、木槌などで叩いて割って細かく分けられました。

武士の魂・刀の刃(は)と柄(つか)の語呂にかけて、「刃柄の祝い」(はつかの祝い)で、元々は正月20日(はつか)の祝いと定められたとされているようです。

刃柄祝いで1月20日とされていた具足祝い・具足開きですが、江戸幕府の第3代将軍・徳川 家光が慶安4年4月20日に亡くなったことで、20日という日付が忌避され、大名家が米蔵などの蔵開きを行う1月11日にずらして催されることになった経緯があるようです。


講道館における元旦式の歴史


柔道・講道館における元旦式、また鏡開き式は1884年(明治17年)に始まりました。
講道館の創始は1882年6月5日、そこから一年おいた正月と言うことになります。

前提として最初期の講道館では、嘉納治五郎は当時、修行者をなるべく広く求めるがために、来て学ぶものの便宜をはかるため、授業料も道場費も徴収しないことにしていたようです。
これは、嘉納治五郎の述懐によると当時、西洋の思想よりは、より多く日本古来の思想に支配されていたからということです。
すなわちは道を講じ人に教うるに当たって、そのために人から金銭を徴するというはずのものではないという考えもあって、何物もとらなかったそうです。
ただ当時は、門弟が入門をする際、扇子一対を持参することを定めとしていました。

それから、毎年一月一日から七日までの間に、元旦を祝うために鏡餅を道場に持参することにしていたようです。
入門者が増加するに連れて後年は扇子を持ってくることをやめ、入門料を納め始めましたが、鏡餅は以前の通り持参させたようです。
また東京に居ないものには、書面をもって年賀を述べる形をとらせました。
そこから、講道館では、鏡開式は毎年の正月の第二日曜日として、その日の寒稽古の後に、前述した元旦から七日までに持参した鏡餅を開いて新年を寿いだそうです。

最初期の講道館の元旦式の流れは次のようだったそうです。

まず嘉納治五郎館長が杯に屠蘇を注ぎ、ほさないままに次に渡し、そこでまた屠蘇が注がれ更に回す。
こうして一巡りした杯を二回目は注ぎも飲みもせずまた回す。
そして三回目になって初めて嘉納治五郎館長がわずかに飲み、それを次々に回し、残った屠蘇をそのままにして杯を納める。
最初の屠蘇を注ぐ行為は「働くこと」を象徴。
次に飲まずに回すのは「謙譲の精神」を象徴。
そして最後に自ら注いだ量より少なく飲むことは、「共同の備蓄」を象徴。
これを講道館と嘉納塾の精神とする、ということだそうです。

当初講道館における鏡開きの流れ

1884年から行われた講道館における鏡開き式の第一の行事としては、師範から門生に対し、柔道に関する講話から始まりました。
また、門人総代の賀詞がありました。
次に、前年一ヵ年の間に最もよく勉強した者、最も修行上進歩を顕した者、およびすでに成熟に至っている先進者、これらの中より人選して、または乱取りをなさしめて名誉を表彰しました。
これについては幼年組も青年組も、段の低い者も高い者も、皆その選に当たるものであったようです。
それが大抵、午前十一時か十一時半に終わったようです。
それから、在京修行者が七日までに持ってきた鏡餅をたねにして汁粉を作り、また揚げ餅を作って参会者に饗しました。
この時は、慣例として、その日に昇段したものが主人役となり、道場に配膳もし、給仕もして、来会者を接待する決まりとなりました。
講道館では当時慣例としては、年に四回昇段するものがある中で、そのうち鏡開きの時に最も多くの昇段者があったということです。

講道館における鏡開き式は昭和4年(1929年)までは道場内でこれを行って公開しなかったそうですが、嘉納治五郎は昭和5年(1930年)1月からは講道館の鏡開式を公開し、一般人に柔道を理解せしめる機会を与える進展の方針に進んだようです。


参考文献
『嘉納治五郎大系 第一巻』P.172
『嘉納治五郎大系 第十巻』P.54
『柔道大事典』P.84 「鏡開式」
『柔道の歴史 嘉納治五郎の生涯 第2巻 熱闘編』P.76

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